BNCTと光免疫療法

BNCTと光免疫療法のどちらの治療も、表面から比較的浅い場所に腫瘍がある場合によい適応となります。そのため、光免疫療法が適応になる場合は、ほとんどの場合BNCTにも適応があると考えられます。

しかし、光免疫療法を実施されているご施設へ通われている患者様では、まず光免疫療法をお勧めされ、BNCTについて検討されないケースが多くなっているようです。

それぞれ治療のメリット・デメリットをふまえて、慎重に治療方針を判断していただくことが望ましいと思われます。


BNCTと光免疫療法の比較

患者様が適切な医療を受けられるよう、当施設は以下のような点について、事前に患者様にご理解いただくことを推奨しています。


 

各治療のメリット・デメリット


BNCT*では治療中痛みを感じないため、無麻酔で治療を行うことができる一方、1時間ほど、やや窮屈な姿勢で治療を受けていただく必要があります。

光免疫療法**では治療中に強い痛みを感じるため、全身麻酔下で治療を行うことが多々あります。治療中は麻酔で意識がないので楽に感じますが、治療後の痛みや潰瘍への症状コントロールが必要です。

副作用については、BNCTでは多彩な症状が生じます。詳細は次のリンクをご覧ください。  副作用について

一方、光免疫療法でも様々な副作用が生じるようです。 (Cognetti, et al. Head Neck 2021, 43:3875-3887.)

*BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、有効性・安全性の証明された保険診療です。
**光免疫療法は、有効性や安全性の証明のために、今後もデータの蓄積が必要な「条件付き早期承認」という段階にある保険診療です。



有効性ならびに安全性については以下の報告が参考になります。


BNCTの第II相治験では、患者21例に対して治療を実施しましたが、そのうち8例が扁平上皮がんでした。治療はいずれも1回だけ行われました。扁平上皮がんの症例において、腫瘍が消えたケース(完全奏効)が50%、縮小したケース(部分奏功)が25%、合計75%の患者で有効でした。なお、BNCTの第II相治験に含まれた非扁平上皮がん13名を含む全21例の患者においては、腫瘍が消えたケースが24%、縮小したケースが48%で、合計71%の患者に有効でした。
重篤な有害事象は全21例中で1例(5%)のみで、治験中の死亡事例はありませんでした。 (Hirose, et al. Radiother Oncol 2021, 155:182-187.)

光免疫療法の第II相治験では、30例の扁平上皮がんに対して治療が実施されました。治療は4回まで許容され、実際に1回のみ治療の患者が11名、2回の治療を受けた患者が7名、3回の治療を受けた患者が8名、4回の治療を受けた患者が4名でした。その上で、腫瘍が消えたケースが13%、縮小したケースが30%で、合計43%の患者で有効でした。
また重篤な有害事象は43%にみられ、治験中の患者死亡が3例(10%)と報告されています。 (Cognetti, et al. Head Neck 2021, 43:3875-3887.)

BNCTと光免疫療法の治験の患者背景はもちろん異なりますが、その対象となった扁平上皮がん患者は「6ヵ月以上の生存が見込まれる局所再発頭頸部癌の患者」でした。

BNCT、光免疫療法、いずれの治療のあとにも組織には影響が残り、もし腫瘍が残ってしまった場合は状態が変化しますので、次に別の局所治療が行えるとは全く限りません。
従いまして、上記のことをふまえて、患者様が再発時の治療としてまず何を優先するかに基づいて、慎重に治療方針を決定いただくことが強く望まれます。

BNCTを希望する場合には、患者様から主治医へのご提案が必要になるかもしれません。
当院ではいつでも患者様からの治療のご相談を受け付けております。