当センターで実施している臨床研究について

1)切除不能再発・局所進行頭頸部癌に対する加速器BNCT30およびSPM-011を用いたホウ素中性子捕捉療法の有効性および安全性評価

(企業主導治験(住友重機械工業、ステラファーマ)、多施設共同、非盲検試験)

 整容や食べる・話すなどの重要な働きをつかさどる頭頸部のがんは、進行すると非常に難治であり選択できる治療の幅は極端に限られてしまいます。本研究では、治療抵抗性となってしまった頭頸部癌を対象にして、新しい中性子発生装置のBNCT30とホウ素製剤SPM-011を用いたホウ素中性子捕捉療法を実施し、その有効性と安全性を評価しています。
 2019年6月現在、予定患者数の21名の登録はすでに終了し、治療後の経過観察を実施しております。その途中結果は2019年5月の米国臨床腫瘍学会American society of clinical oncology(ASCO)で報告しました。腫瘍の奏効率は71%、1年無増悪生存率は71%と非常に高い効果をもたらす一方で、重度の副作用は従来の再発治療に比べ少ないことがわかりました。今後の医療機器承認および薬事承認が期待されます。

2)再発頭頸部扁平上皮癌に対するホウ素中性子捕捉療法の線量増加のための第 I / II 相臨床試験(準備中)

 上記 1) の治験の結果、非常に良好な腫瘍の制御(縮小や消失)がもたらされました。ただ、ホウ素中性捕捉療法の副作用が大変低く抑えることができたことから、逆にもっと線量を増やして効果を高めた治療がおこなえる可能性が出てまいりました。私たちの施設では、患者さんの治療体位を非常に高い精度で設定するノウハウが確立されていることから、安全に線量増加が十分実施可能であると考えられます。そこで、これまでの治療線量から、更に20%ほど高い線量で治療が可能であるかどうかの安全性評価(第I相の臨床試験)を実施する予定です。
 安全性が確認された後に、引き続きその有効性を確認するための第II相臨床試験を実施し、1)で実施した臨床試験の扁平上皮癌の治療成績との比較を行い、線量増加の有効性を確認する予定です。

3)再発膠芽腫に対する加速器BNCT30およびSPM-011をもちいたホウ素中性子捕捉療法の有効性および安全性評価

(企業主導治験(ステラファーマ、住友重機械工業)、多施設共同、非盲検試験)

 膠芽腫は膵がんと並んで予後があまりよくない悪性腫瘍のひとつです。膠芽腫の初期治療は手術、抗がん剤、放射線治療を用いますが、再発率が非常に高く、現在も再発に対して十分な効果をもつ治療法の開発が続けられています。本試験では、治療手段の乏しい再発の膠芽腫の患者さんを対象にして、加速器中性発生装置BNCT30とホウ素製剤SPM-011を用いたホウ素中性子捕捉療法を実施し、その有効性と安全性を評価しています。
 2019年6月までに、すでに予定患者数の27名に対して治療が実施され、治療後の経過観察を実施しております。その結果はいまのところ未公表ですが、近いうちに発表される予定です。

4)FBPA-PET/CTによるホウ素中性子捕捉療法の有効性予測の研究

 ホウ素中性子捕捉療法に用いられるBPAという薬剤にとてもよく似た構造をもつFBPAを投与し、腫瘍へどの程度集まるかをPET/CTで評価することによって、ホウ素中性子捕捉療法が効く腫瘍であるかどうかを事前に評価できます。FBPA-PETはホウ素中性子捕捉療法を行うためには不可欠の検査ですが、FBPAが医薬品として承認されていないために、臨床研究として実施しています。

5)低酸素PET検査としての18F-FRP170-PETの有用性の研究

 がんが大きくなると自分自身の大きさのわりに十分正常な血管を作ることができず、その内部は徐々に酸素が少ない状態におちいっていきます。この低酸素の状態は、一般的な抗がん治療(手術、化学療法、放射線療法)を効かなくさせることがわかっています。ホウ素中性子捕捉療法においてもホウ素の取り込みに大きく影響することが、当センターの研究から明らかになってきており、事前に低酸素の部分を評価することが重要である可能性があります。
 酸素の少ない部分に集まるクスリを用いて撮影するPETを低酸素PETとよびます。これまでにも低酸素PETは実施されてきましたが、クスリを体内に投与してから撮影までに長い待ち時間を必要とするため、日本では積極的に用いられていませんでした。当センターでは、すぐに低酸素部分に集まるFRP170というクスリを用いることによって、撮影までの待ち時間を半分以上に抑え、この低酸素PETを実用化する試みをおこなっています。