ESMO congressはヨーロッパ最大のがん治療の学会で、毎年2万名を超えるがん治療のプロフェッショナルが参加します。このたび診療所長の廣瀬が当院で実施した頭頸部癌に対するBNCTの第II相臨床試験(企業主導治験)の最新データを発表しました。ヨーロッパではフィンランドを中心に各地で原子炉を用いたBNCTの開発が進められてきました。その経緯から、ヨーロッパではBNCTに対してより高い期待感があるように思います。このたびのESMOでの受賞はヨーロッパにおけるBNCTへの期待感を反映したものとも感じました。

 発表では各国の出席者から熱心な質問をいただきましたが、その中で最も多かった声としては、「この試験は、拡大や延長はしないのか」ということでした。本試験は非常に良好な結果ではありますが「この治療がスタンダードたりえるか」という問いに答えるにはあまりにも登録患者数が少ないため、データの信頼性が不十分と感じる臨床医が多いのは当然です。試験の拡大によってより信頼度の高い結果となれば、本治療は再発・進行頭頸部癌のスタンダードにもなりえるでしょうし、更に本治療の普及は加速しより社会に貢献できると考えられます。

 私たちは本試験の主導者である企業に対してこのことを強く求めておりますが、いまだ試験延長の見込みは立っていません。試験の継続には莫大な費用がかかることもまた事実であり、国や企業がもっと積極的になってBNCTの治療の拡大に取り組むべきであると実感するところです。